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第十九章 変わりつつある自分 前編

 

「・・・・・そうか、結局ライザは見つからなかったか。」

 

「はい・・・、一応捜索はしてみたんですが、もう時間が・・」

 

「いや、仕方ないさ。俺も探したが少なくともこの国にはいない。

 それに・・・どちらかといえばそのほうが都合がいい。」

 

「え?」

 

「・・・・ん、いや、彼女は民間人だからな、これ以上危険な目にあわせたくないしな。」

 

彼女の存在が『危険』である可能性があるというのは黙っておいた。

今のユミールにこれ以上心配をかける必要はない。それに・・・・・狙われるとしたら恐らくは俺のはずだ。

 

「ええ、そうですね。これからの戦いは今までとは違うものになるでしょうし・・・」

 

「そうだな、これからの戦いは楽にはいかない・・・・おそらくは前の戦い以上に厳しく・・・」

 

ふと、そこまで言ってユミールの視線に気づく。何故か自分の方を驚いたような、気遣うような表情に変わっている。

 

「・・・・どうした?」

 

「あ・・・・その、ごめんなさい。」

 

「何で謝るんだ?」

 

「・・・いえ、私達の力が足りないせいで、前の戦いではカザミさんが・・」

 

「いや・・・逆さ。俺の力が足りなかっただけだ。気にする必要はない。

 それに今はライブレードがあるんだ、心配ないさ。」

 

それだけ言うと、その場を立ち去るように歩みを進める。

ふと、前回の<ゼ=オード>との戦いが脳内に蘇る。

レイアル・クローゼで相手のフィールドが破れなかった・・・今までに出会ったことがないぐらい強力なフィールドを纏った相手。

何故かライブレードだとそのフィールドが打ち消せたために、疲弊していた状態でも撤退させることはできた。

それに・・ライブレードに乗っていると今まででにない『力』を感じた。

たとえ誰が相手であろうとも負けることのないような錯覚するほどの力が溢れてきた。

だが、あの機体は一人では戦えない、二人でないと無理だ・・・・・、あの二人のどちらかの力を借りなければいけない。

 

「次は・・・・・負けないさ・・・絶対に負けるわけにはいかないんだ。」

 

負ければ自分以外の人間を危機にさらすことになる・・・エリスかメルヴィ・・・恩人と自分とかつて家族同然であった少女に生き写しの子を。

負けることは許されない、何があろうとも敗北だけは許されない。

サラとの約束のために、恩人とあの子を死なせないために。

 

(もう・・・・二度とあんな後悔は)

 

自分が無力な故に助けることができなかった同胞、守ることのできなかった人。

あのときの無力な自分とは違うはずだ・・・・自分の身体を限界まで何度も追い込み、修練を重ねてきた。

アキトのように人を守る力を手に入れたとは思えない・・・・・だけど、敵を殺すことはできる。

 

(堕ちよう・・・どこまでも修羅に。守らなくていい・・・殺すだけでいい、生き残るだけでいい。

 それでサラの魂が救われるなら・・・彼女達が死なないならそれでいい。)

 

かつての約束・・・・死の間際のサラと生き残るという約束。

その約束を果たすためだけに生きていると言ってもいい。

本当なら数年前に火星の後継者の戦いが終わったときに自分は命を絶っていただろう。

誰から止められようとも・・・彼女の元に逝きたかったから・・・・・疲れたから、殺しすぎたから。

 

戦うことは好きじゃない・・・心の奥で戦いを望んでいる自分がいようとも

相手を殺すたびに心に何かどろりとした水滴がたまっていくような感覚が嫌だった。

それが溜まっていくごとに自分が何かに蝕まれていくのを感じる。

何人斬ったかは覚えていない、どれほどの機体を壊したのか、幾つ研究所を潰したかは覚えていない。

そのたびに・・・誰かを殺すたびに何かを壊すたびに自分が少しずつ壊れていく。

復讐に生きていたときは何も考えなくてよかった。自分が壊れようとも気にする必要がなかった。

衝動にかられるまま、火星の後継者をただ斬り続けてればよかった。

だけど・・今は違うかもしれない・・・死にたいと思う自分と生きたいと思う自分がここにいる。

サラとの約束のためだけではない。別の何かが生へと執着させる。

何故・・・自分は生きたいんだ?

 

 


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