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第三章後編1

 

診療室

アルフォリナ「うっ……ここ、は………?アイ………さん?」

 

アイ「………!」

 

アルフォリナ「わたくし………生きて………」

 

アイ「うわぁぁぁぁ!よかった!生きていたんだぁ!

 

アルフォリナ「ア、アイ、さん………?うふふふふ、痛い、です……」

 

アイ「あっ、ご、ごめん!大丈夫?」

 

アルフォリナ「ふふふふ、大丈夫です。………ここは、もしかしてリーボーフェンの中ですか?」

 

アイ「う、うん。そうよ。あなたを薬で眠らせて城を脱出したんだって。」

 

アルフォリナ「そう、ですか………エグゾギルム卿ですね。あっ、他の者は!?」

 

ミヤスコ「脱出できたのはアルフォリナ様とエグゾギルムさんだけのようです。あとはレデュースさんがこの船に乗っています。」

 

アルフォリナ「そうですか。レデュースが………。ではタイロンは……。」

 

アイ「アルフォリナ…………。」

 

ガボン「さてと、それじゃ俺たちは失礼します。女王さんはゆっくり寝ておくこと。いいですね?」

 

アルフォリナ「はい……ありがとうございます。」

 

ガボン「それじゃ、アイあとは任せたぞ」

 

アイ「え?う、うん………」

 

ミヤスコ「それでは失礼します。」

 

扉が閉まる。

 

アイ「…………」

 

アルフォリナ「…………」

 

アイ「はははは……いっぱい話したいことあったのに、おかしいな、なにも出てこない………。」

 

アルフォリナ「アイさん……心配をおかけしてすみませんでした。」

 

アイ「ううん!無事でよかった。城が陥落したって知った時、心臓が止まるかとおもったわ。こうして無事でいてくれるだけで十分よ。」

 

アルフォリナ「ふふふ…………」

 

アイ「………あっ!そうだ!ねぇ、甘いもの食べたくない?」

 

アルフォリナ「え?」

 

アイ「ねぇ、食べたくない?」

 

アルフォリナ「……そうですね。すごく食べたい気分です。」

 

アイ「よぉーし、それじゃ、特別にアイちゃん特製スペシャルクッキーを作ってあげるわ!あっ、でも材料あるかな………」

 

アルフォリナ「アイさんが作ってくれるものなら喜んでご馳走になります。」

 

アイ「そ、そう?そんじゃ、ちょっと待ってて!すぐに作るから!」

 

プシュー

 

扉が閉まる。

 

アルフォリナ「ふふふふふ」

 

プシュー

 

アイ「あっ、そうそう、ここで寝ていないとダメよ!今はゆっくり休んでげんきにならないといけないからね。」

 

アルフォリナ「はい、わかりました。」

 

アイ「よしよし。絶対だからね!」

 

アルフォリナ「はい」

 

アイ「それじゃ!」

プシュー

再びドアが閉じる。

 

アルフォリナ「………ありがとう、アイさん」

 

 

 

通路

 

「んっ?」

 

診療室からガボンとミヤスコが出てきたようだ。

ちょうどいい。話があったところだ。

しかし、ガボンは自分とは正反対の方向へ行ってしまった。

まぁ、ミヤスコでも問題はないけど…。

だいぶ近づいたが気づく様子は無い。

 

「女王の様子はどうだい?」

 

仕方が無いのでこちらから話しかけてみた。

 

「えっ?はい…。今は落ち着いて休んでおられます。」

 

やはり気づいていなかったようだ。少し驚いた様子を一瞬見せたが、すぐに穏やかな顔に戻る。いつも笑顔を絶やさない……、そんなイメージがある彼女だ。

 

「そうか……それと少し頼みたいことがあるのだが…………」

 

本題に入ることにしよう。

 

「何でしょうか?」

 

「鎮静剤をいくつかくれないか?」

 

「えっ……かまいませんけど。どこか悪いのですか?」

 

「いや……たいしたことはない。ただ用心の為に持っておきたいだけだ。」

 

これも嘘ではないが全てを話すわけにはいかない。

 

「……わかりました。ただ条件があります。」

 

「?」

 

「後で、悪いところがないかチェックしますので、来てくださいね。」

 

なるほど…。これはまいった。自分がどうやら診療室が嫌いなのを見抜かれていたらしい。

それに今はガボンもいないし………。

 

「…………………わかった。」

 

しばらくの間悩んだが、承諾することにした。

仕方ない……。

 

それから鎮静剤をとりに診療室へミヤスコは入っていった。

待っていようかと思ったが、中へ入ることにした。

 

「……あなたは?」

 

声が聞こえた。ミヤスコではない。

確かアルフォリナという名前のヨークの女王だ。

 

長い金色の髪が美しいが幼いといった感じをうける。

まだ年齢は十四、五といったところだ。

 

さっきは遠巻きにしか見ていなかったが、こうしてみると威厳があり、なるほどと思わされる。

 

「カザミ・ヨウスケ…。」

 

それだけしか答えられなかった。

何故かと言うと、十四、五歳の少女が女王としての貫禄をもっていたことに驚いていたからだ。

 

人によってはカリスマ性を持つ者がいる。

指導者としての素質をもつ者は意外に少ない。

それは天性のものか、それとも後から備わるものかはわからないが、この少女ははっきりとそれがあった。

 

「私はアルフォリナ…。貴方も地球から来た操者ですか?」

 

その真っ直ぐな瞳が自分を見ていた。

意志の強そうな瞳。瞳に曇りが感じられない……。

 

「ああ……。少し他のやつらとは事情が異なるが……。一応、アガルティアに傭兵として協力している。」

 

簡潔に事情を説明する。

 

「傭兵…ですか。」

 

彼女の表情が少し変化したように見えた。そういえば他の連中は自分の意志で協力しているらしい。

だがその表情が何を意味しているかはわからなかった。

 

「ああ……。他のやつらと違って、元の世界に帰るには必要なものがあって…、戦いが終わったら、そいつを探す手伝いをしてもらおう条件だ。」

 

自分が何故こんなことまで話しているかはわからない。

このことを話すことに意味があるのかもしれないし、ないのかもしれない。

 

 

「それは……?」

 

「遺跡だ……。自分は事故でこっちへ跳ばされた。その際、俺をこっちの世界に飛ばした役割を果たしたのがその遺跡だからだ。」

 

直接、跳んで帰るのは……まず無理だ。

距離というものがある。長距離をボソンジャンプすると体力の消耗が激しい。

個人差はあるが……。

最悪、帰れたとしても衰弱死という可能性もある。

 

「この戦い……ゼ=オードの戦いは、危険なものです。ゼ=オードは世界に災いを招こうとしていると思われます。それでも貴方は戦ってくれますか?」

 

「妙なことを言う。俺に他の選択肢はない。どうしても遺跡を探さなくてはならない。そしてゼ=オードが世界に災いを招こうというなら遺跡が危険にさらされる恐れがある。だから排除する。」

 

「…………」

 

「俺はこの方法が一番確実だと思っている。」

 

個人の能力は限界がある。俺はそのことをよく知っている。

個人に対して組織というのは強いものだ。

 

(それに俺は戦うことしかできない。)

 

声に出さず呟く。自分が身につけたものは人の殺し方、生き残るための術、機動兵器の操縦技術、白兵戦、全てが戦うことだけだ。

 

俺に他に何があるのだろう

 

自分を卑下することは身体及び精神に影響を与える。

その言葉を思い出す。

 

(俺は自分自身を制御することが出来る)

 

己に施したマインドセット。

自分の制御。感情の波、身体の動悸、それから行われる行動さえも制御しなくてはならない。

生きていくために、全ては目的の為に………。

 

しばらくの間、沈黙が続く。

 

「心配しなくても協力はする。俺がアガルティアやヨークに刃を向ける理由はないからな。」

 

アルフォリナ「これを……」

 

何かを渡された。

 

カザミ「これは?」

 

何だろう?何かペンダントみたいなものだ。

 

アルフォリナ「お守りみたいなものです。」

 

カザミ「何故俺に?アイにでも渡してやったほうがいいんじゃないか?」

 

いきなり見ず知らずの他人に渡すものじゃないだろう。

 

アルフォリナ「そうですね………。実は私の家系には力をもって生まれてくるものがいます。」

 

カザミ「……………?」

 

いきなりの内容に思わず戸惑いを隠せない。

 

アルフォリナ「私もその一人です。予知というか、未来のことが少しだけ見えるのです。」

 

カザミ「………未来が?」

 

相手は冗談を言っているようには見えない。

彼女は本気なのだ。

 

アルフォリナ「はい。はっきりした形ではないのですが。」

 

カザミ「その力が……俺に渡せとでも。」

 

正直言って話を完全に信じることはできないが、彼女の眼を見ていると、そんな気がしてきた。

 

アルフォリナ「………わかりません。ただ、こうしたほうがいい気がするのです。」

 

カザミ「そうか…………。なら、ありがたく受け取っておく。」

 

お守りなんて効力は信じていないが、気休めになるかもしれない。

 

 

少しして、ミヤスコが薬を持って出てきた。

それを受け取り、部屋から出て行く。

 

俺は何をやっているんだ…………

何故あんなことを話す。わざわざ話す必要なんてないじゃないか。

それだけじゃない・・・俺らしくない。どうかしてしまったのだろうか?

全てにおいて何かがおかしくなりつつある。

くっ・・・・・俺は俺だ。他の何者でもない。自分を変えれるのは自分だけだ。

なら・・・・自分のなにが変化したというんだ。

俺はいったい・・・・

 


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