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LEVEL29 心の刃 後編

二つの刃がぶつかりあう

憎しみの念にかられた怨念の刃と自らの信念から生じる怒りの刃

抜かれた刃は・・止まらない、どちらかが砕け散るまで

 

 

 

あるビル屋上

 

『マスター・・・よろしいのですか?今、狙撃すれば、少なくとも茂みに隠れている一組は消せますが・・』

 

鳥型の魔物が、戦いを見守っている黒スーツの男に恭しく声をかける。

男は振り返りはしなかったが、魔物には本の持ち主であるマスターが怒ったことが伝わった。

 

「シェル・・・私は約束したのだよ。」

 

男が魔物の名を呼ぶ。その声はいつもの平静な口調ではなく、かすかに激昂が込められていた。

 

『ですが・・このままでは逃してしまう恐れも・・』

 

「アレには手を出さんとの約束だ・・・例え、あのようなバカな相手だろうと約束は約束だ・・・反古にすることはできん。

 あの男が本を燃やされるか・・・・こちらとの約束を破るか・・それ以外の理由でアレに手を出すことはならん。

 わかるか?・・・約束というのは本来重いものだ。まぁ・・最近はそれがわからんバカが多いがな・・・。お前はそうではあるまい?」

 

『もうしわけ・・ありません。マスターの仰るとおりです。』

 

「それにいざとなったら私とお前で対処すればいい。だから、私は静観していられるのだ。

 ・・そのときは存分に働いてもらうぞ、シェル。」

 

『はっ!お任せをっ!』

 

魔物の士気が高まるのを確認して、男は再び戦いに意識を集中する。

 

(さて・・・高嶺清麿、か。No3の話よりもできる・・・この短期間の内に成長したか。

 なるほど・・・奴が眼をつけるだけある。あのバカでは少し荷が重いな・・・。)

 

下で繰り広げられる戦いは清麿とティオが優勢なまま、続いていた。

何度もロブノスは呪文を受けているにも関わらず清麿とティオはほぼ無傷だった。

しかし、ロブノスへの攻撃はその防御力ゆえに決定打までは至っていない。

 

 

 

 

「くそぉっ・・・・何故だ、何故あいつらに助けるっ!?俺達の邪魔をする!

 そんなことに何の意味があるっていうんだ!!」

「そうだ・・・あいつらをかばうことに何の意味がある!?」

 

「・・・何故だと?」

 

心の底でギリギリ抑えていた何かが壊れる音が聞こえた。

もう・・我慢はできない、いや・・する必要などない。

 

「お前達・・・自分が何をしようとしたのかわかっているのか!?」

「そうよ!貴方達は取り返しのつかないことをするところだったのよ!」

 

「なっ・・」

 

俺には・・・あの子の声・・アリスの声が聞こえた。だから知っている・・・貴様らが無関係の人間を利用したことを!!

 そして・・何よりもあの子だけでなく、周りの全てを壊そうとしたことを!!

 

『全部・・大切なものを全て奪われることになるかもしれないぞ?』

 

あのときのトウヤの言葉が蘇る。それを実行しようとした魔物が現に目の前にいる。

 

「お前等はそれがどういうことか・・・どんなにつらいことなのかわかってるのか!?」

 

思い出すトウヤの鬼気迫る顔、戦いに見せた狂気・・執念。

男の全てを戦い・・復讐へと投げ出させたことと同じことを奴等はしようとしている。

 

「黙れ・・・黙れ、黙れぇっ!!そんなことなど関係ない!!

 我は奴が憎い・・・憎くて仕方ない、それだけだぁっ!!リュック!!」

「ビライツ!!」

 

「・・・そんな理由でぇっ!!レイ!!」

 

ズウンッ!!

 

今までにない熱量の光線と、純白の輝きをもつ熱衝撃波がぶつかり合い、消える。

 

「何故、アリスをそこまで憎む!?」

「奴は生まれ持った力だけで、エリートが決定している!!・・生まれも魔界屈指の名家・・なんで奴だけが特別なんだ!?

 それに・・奴は人の心に土足で入ってくる、わかるか?

 同情の目で見られるつらさが、見下されるつらさが、見られたくない心まで覗かれる気持ちが・・・だから、我は奴を壊す、徹底的に!」

 

「・・・けるな

「・・清麿?」

 

「ふざけるな!!あの子がそう言ったのか!?そうやって・・・同情だとか、見下されてるとか勝手に決めつけたのはお前達じゃないのか!?」

 

「くっ・・・黙れ!!」

 

「あの子の心は泣いてたよ・・・生まれた時から人にない力が備わっているせいで自分の大切な人や周りの人間が傷つけられることを! 

 そんな優しい子が、人を見下すだと・・・お前の心が捻じ曲がって、そう思い込んだんじゃないか!」

 

一瞬、憎しみに歪んでいたロブノスの顔が悲壮なものに変わる・・が、すぐに怒りと憎しみの表情へと変わる。

 

「・・・っうう、黙れぇええっ!!」「ゼルセン!!」

「マ・セシルド!!」

 

ゴシャアッ!!

 

盾に衝突し、腕が戻っていく。ロブノスの攻撃は今まで最も早く強いものであったが、盾は揺るぎもしない。

 

だから・・・俺は貴様等が許せん!俺達はお前を止める!!

 あの術をやるぞ・・・ティオ!!

ええ・・・こんな戦い終わらせてみせる!あの二人には指一本触れさせないんだから!!

 

本が心に応えて異様なまでに輝きを放ち始める。

全てを終わらせるために・・・

 


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