LEVEL31 それぞれの旅立ち 前編
「・・・あの、ここに何が?」「・・・何もないね、しおりねーちゃん。」
・・・・草原というか、広大な空き地だった。辺りには人気もなく、空き地の周りにも建物は少ない。
「ここは回収ポイントだ。・・・ここにいれば仲間が迎えに来る。」
そう答えながら周囲の警戒をトウヤは怠らない。
「貴方の仲間・・?」「・・・・」
「ああ。あの男から聞いてないのか?」
「え、ええ・・特には。」
「そうか・・さて、話は終わりだ、来たぞ。」
バババババ・・・・
風と共に騒音の主である機械が上空に現れていた。
「へ、ヘリコプター・・?」「凄い・・空を飛んでる。」
実物を見るのは初めてなのか、二人は呆然とやってきたそれを眺めている。
「お迎えに来ましたよ〜、トウヤさん。」「クェッ!」
組織の一員であるチアキがヘリコプターから顔を出して、手を振っている。
・・・・・何やら、肩の上にペンギンらしき生物もいたが。
ヘリから外に出たチアキに声をかける。心なしか、疲れているように見える。
「・・・早かったな。どうした、顔色が悪いぞ?」
「あはは・・シェリーさんにちょっとお説教を受けてたもので。」
「ふっ・・そいつは災難だったな。」
「うう・・人の苦労も知らないで、元はいえばトウヤさんが原因なんですよ〜。」「クェッ、クエッ!!」
よほど酷い目にあったのか、本気で泣いているようだ・・謎の生物も猛抗議をしている。
・・・・よく見れば服がところどころボロボロだ。
「そう言うな。」
「あのですねぇ・・・」
「え、ええと・・・この人がさっき言っていた?」「・・・・」
放っておくといつまでも雑談しそうな雰囲気を破ったのはしおりの声だった。
コルルは人見知りをするのか、しおりの服をぎゅっと掴んで後ろに隠れていた。
「・・そうだったな、忘れていた。」「・・なるほどぉ、この人が報告にあった人ですね。」「クェッ。」
二人と一匹の視線が集中する。思わず一歩後ろずさるコルルとしおり。
「・・・・・とりあえず、話は乗ってからにしよう。新たな敵が追撃してくる可能性もあるしな。」
「その割には、余裕そうでしたけど。」「クェッ、クェッ。」
一人と一匹にツッコミを受けれど全く無視して乗り込むトウヤ、それについていくガッシュ。
「お二人も乗ってくださいね、出発しますよ〜。」
「は、はい・・コルル、行くわよ。」「う、うん。」
一抹の不安が残るものの、しおりとコルルも続く。
「・・・・この二人がさっき話した二人だ。」
「しおりさんにコルルさんですね、私はチアキです、こっちが相棒のペンペンですよ。
ほら、ペン太挨拶して。」
「クェッ!」
チアキに言われて謎の生物・・もといペン太が頭を下げる。
「し、しおりです、よろしく・・」「私、コルル。」
「・・・・・ちなみに、本当の名前はペン太以外にあるらしいぞ。」
誰に言うでもなく、呟くが・・・見事に誰も聞いてなかった。
「ほら、トウヤさんも挨拶して。どうせ、ろくに自己紹介もしてないんでしょう?」
「いや、確かにしてないが・・」「・・・・」
図星だった。確かに前回のときも今回のときも、ドタバタしていたせいか、この二人とはほとんど喋っていない。
・・・・根負けして、ため息をつく。
「・・・・トウヤだ。こっちがガッシュ。・・・ガッシュは訳あって、喋れないが気を悪くしないでくれ。」「・・・」
「・・・・で、トウヤさん、何があったんです?いまいち事情がわからないんですけど・・・
二人とはなるべく関わらないようにしておくんじゃなかったんですか?
それに・・随分服がボロボロですけど・・何かアクシデントでも?」
「ああ・・・そういや、詳しい説明してなかったな。
簡潔に言うと、No2に二人の癒しの力を知られた。」
「・・・・・なるほど、そういうことでし・・って、今、さらっとNo2とか言いませんでしたか?」
チアキの顔が露骨に引き攣り、冷や汗が浮ぶ。
「ああ。」
「え、ええっ!?聞いてないですよ、No2が動いてるなんて・・・・まさか戦ったんですか、あのNo2と!?」
チアキが調べた情報ではデス・ブレイズで動いたのは下っ端が一名ということだけだった。
「ああ、お互い痛み分けだ。・・・・倒すことはできなかったが、だいたいの能力は把握した。」
「へぇ・・・よく無事でしたね。でも、悔しいです・・・私の目を欺くなんて。」
「お前に落ち度があったわけじゃない、あいつの魔物の力もそうだが・・本人がずば抜けてる。
今まで仲間が倒されてきたにも関わらず、正体が不明だったのも・・これで納得がいった。」
「うう・・・でも、それってなぐさめになってるようでなってないですぅ。」
本の持ち主の死角から敵を倒す技術と優れた判断力、冷静さ・・そして遠距離から攻撃できる魔物の力、翼による高速移動。
・・・実に恐ろしい敵だ、不意を上手くつけたからいいもの、自分が初めから狙われていたらと考えると寒気がする。
「そう言うな・・俺だって、切り札(ブラスト・ザケルガ)を使わざるおえな・・かっ・・た。」
グラッ
ふと、言葉の最後の方で、視界が揺らいだ。隣に座っているガッシュの視線が心配そうなものに変わる。
(・・・やはり、無理があったか?)
酷使した身体がそろそろ限界に来たようだ。元々、あと数日は安静が必要だった身体で強行軍、激しい戦闘、何よりも無茶だったのがあの呪文。
やはり、あの呪文は今の自分にはきつかったようだ・・・自分の未熟さを痛感する。
「・・・・少し寝てていいですよ、後は私が説明しておきますので。」
「そうか・・・・いつも、苦労をかけるな。」
ゆっくりと瞼を閉じる。睡魔はすぐにやってきて・・意識は落ちた。