LEVEL33 超えるべき壁 前編
戸惑い、疑問、焦燥・・
行き着く結論は・・
「あ、いや・・しおりさんとコルルが・・」
「?・・あの二人がどうしたの?」
「・・・・アンチ・ブレイズの元で戦うって・・」
「え?」
「もう家には、デス・ブレイズとの戦いが終わるまで戻らない・・・・そう言ってた。」
・・・・何ヶ月、何年かかるかわからない、それなのに彼女は、間違いなくそう言ったのだ。
「な・・何で?どうして、あの二人が・・・」
「・・・・・・・・わからない。理由は答えてくれなかった。」
理由はわからない。聞いても彼女は謝るだけで・・
「でも!あの二人はあんなに戦いを嫌ってたのに・・・それなのに。」
「・・・・・ああ。」
彼女たちは戦うことが苦痛だったのは間違いない。
家族はどうするんだ?それに学校や友人は・・?
簡単に決められることじゃない・・少なくとも今の生活を捨てることになる。
(・・・・何があった?何が彼女達にそんな決断をさせたんだ?)
昨日、コンサートに行く前に、公園で話したときは特に変わった様子はなかった。
・・少なくとも、それは間違いない。
何かあったとしたら、時間的に考えると昨日・・・
昨日はコンサートに行って・・・ロブノスと戦うことになって・・・気絶して・・
「・・・・・・!!」
忘れていた、気絶する直前に疑問に思ったことを。
「・・・・・雷。」
晴れた空の元で、戦闘中・・それも戦いが決しようとしていたタイミングに鳴った雷。
あのときは目の前の敵に集中していて、術を放った後に気絶したから深くは考えなかった。
「えっ?」
「なぁ・・・・ティオ、前の戦いのとき、雷が鳴ったよな?」
「うん・・凄かったね。でも、それがどうしたの?」
「・・・・・・あのとき、空は晴れていた。」
「あ・・」
大気を切り裂く圧倒的な雷・・・俺はあの雷を知っている、前に見たことがある。
そして、ロブノスの言っていた、組織がデス・ブレイズだとしたら・・
「トウヤとガッシュ・・・あの二人が来ていたんだ。」
デス・ブレイズ、不自然な雷、アンチ・ブレイズ・・・3つが繋がった。
「じゃぁ、二人を連れて行ったのは・・」
頷く。恐らく、彼女達を連れて行ったのは、トウヤだ・・・彼はきっと、デス・ブレイズを追って来ていたのだろう。
だが、まだ謎がある。何故、彼女達がアンチ・ブレイズに参加することを決めたのか?
そして、トウヤが彼女達を連れて行った理由は何だ?
「あの電撃・・・俺達を助ける為だったのか?」
まず、思いついたのはそれだった。
敵の目を引き付ける為じゃない・・・・・だとしたら、他にも敵がいて、俺を狙っていた?
もし、そうだとしても・・・何故、彼女達が関わって・・・
『本と本は引かれあう』
その言葉を思い出した時、背中に冷たいものがはしる。
俺達が恵さんやアリスと出会ったように、しおりさんとコルルが・・トウヤとガッシュが追っていた敵と出会ってしまったのか?
(・・・・・馬鹿な、そんな偶然が・・)
笑えない推測だった。だが、どうして否定することができるだろうか?
事実、自分達は多くの魔物と「偶然」出会ってきたというのに・・
(だけど・・だからって・・それが、アンチ・ブレイズに入る理由になるのか?)
何かが・・決定的な何かがわからない。
「・・・・・でも、何で二人とも理由を教えてくれないの?
そんなの・・おかしいよ。」
「・・・・」
ティオの声に、そっちの疑問も未解決だったことを思い出す。
・・・そうだ、それもおかしい。本のことを知らない他の人間ならまだわかる。
だが、自分達にも話せない理由って何だ?
戦うことがつらいのに、コルルを傷つけたくないはずなのに、それでも自分から戦うことを選んだ理由は何だ?
「・・・しおりさん、泣いてた。きっと・・つらい決断だったんだ。
そのことを決断することがつらくて・・でも、それしか選ぶことができなくて、だから・・泣いてたんだ。」
「・・・・・あっ。」
ティオが何かに気づいたように、小さく声をあげる。
肩も震えていたが、今の清麿はそれに気づかない。
(・・・・・あのときも・・・泣いてたよな、そして・・今回も。)
電話の声の悲痛さは、暴走したコルルと戦ったときの彼女を思い出さずにはいられなかった。
今の生活を捨て、友人と家族とも離れ、戦うことを選ばなければならない・・・・それがどんなにつらいことか、想像はつかない。
「・・・理由を聞いても、ごめんなさいって謝るってだけでさ。
本当は・・・話して楽になりたかったと思う。」
「・・・うん。」
ティオも涙を堪えながら、それでも気丈に頷く。
「・・わからないんだ、何が彼女をそうさせたのかを。
どこで何が間違ったのかも・・・・」
「でもね・・清麿、私にはわかった気がするの。
何で二人が理由を教えてくれなかったのかを・・」
「・・・・どういう、ことなんだ?」
「それは・・・・」
迷うような表情を見せた後、意を決したかのように、清麿の目をじっと見て、ティオが言葉を紡ぐ。
「きっと・・清麿の為だったんだよ。」
その言葉は、今までのどんな言葉よりも・・痛かった。