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LEVEL40 交差

 

「手、大丈夫ですか?治療はしましたけど・・」

 

「ああ。戦闘で疲れてるのにすまなかったな。」

 

「そんな・・油断した私が悪いんですから、これぐらいは。」

 

戦いに勝利して油断した隙をつかれ、危うく本を奪われかけた。

 

(幸い戻ってきたトウヤさんが相手の鞭を素手で止めてくれたおかげで本は無事ここにある。)

 

「それよりよくやったな。あれだけの戦いが出来ればもう大丈夫だろう。

 訓練は・・・・これで終わりだ。」

 

「そんな、私達はまだ・・」「・・お兄ちゃんやガッシュに全然かなわない。」

 

事実、力の差は歴然だった。訓練こそついていけるようになったが、もし実際に二人と戦うことになれば敗北は必至だろう。

 

「・・・自分達の身を守るだけの力は身についているはずだ。

 あれだけの訓練を乗り越えてきたんだ、もっと自信を持てばいい。」

 

「でも・・トウヤさんや他の人達に比べると、私は・・」

 

「俺やシェリー達と比べる必要はない。

 俺やシェリーの力は単独で敵を倒す為の力だからな。二人が求めている力とは違う。

 誰かの為の助けになるなら、もう十分だ。」

 

まだ納得していない様子の二人にトウヤはさらに言葉を続ける。

 

「それにな、あれだけの心の強さがあるならもう大丈夫だ。

 二人に足りなかったのは戦いに耐える意思の強さだった。

 それも前の戦いを見る限り解決したみたいだしな。」

 

トウヤが苦笑する。まさか、あそこで自分達だけで戦うと言い出すとは思っていなかったのだろう。

 

「それは・・」

 

何かを言いかけてしおりが口を閉じ、目を逸らす。

 

「今はゆっくり休んだほうがいい。

 ガッシュ、行くぞ。」

 

気をきかせたのか部屋から二人が出て行く。

 

「違う、私は・・強くなんてない。」

 

静かになった部屋で、言いかけた言葉をかすれるような声で吐き出すように呟いた。

命令に背いたのは自分一人で最初から戦いたかったからじゃない。

あの人が足止めする光景を単純に見たくなかった。

トウヤさんは本を悪用する人間を決して許さない。

あのときも感情を押し殺していたけれど、相手の本の持ち主に激しく怒っていた。

足止めをするということは攻撃をせず、ただ怒りを押し殺し耐え続けるということ。

その光景が脳裏に浮かんで、それが嫌で、自分でもわからないうちにあんなことを言ってしまった。

 

「しおりねぇちゃん、あの家に帰るの?」

 

「・・・」

 

肯定しようとしたが、言葉が止まる。

迷うことなどないというのに、頷けない。

 

「どうしちゃったんだろう・・私。」

「・・しおりねぇちゃん?さっきから、どうしたの?」

 

元の生活に戻る、その為に必死になって耐えてきた。

その望みが叶うというのに・・喜びが沸いてこない。

 

気づいたら慣れてしまっていた。あの場所を居心地がいいとさえ感じてしまっていた。

一度得た筈の答えがまた闇へと消えてしまった。

 

 

 

 

「何だ・・ガッシュ、寂しくなるか?そういえば、あの二人と仲が良かったな。」

 

「・・・」

 

ガッシュの表情に年相応の少年のものが宿る。

言葉はなくともそれだけでトウヤは理解した。

あの二人はガッシュにとって久しぶりの良き理解者であると同時に気の許せる相手だったのだろう。

それがわかってしまったから、わずかに迷いが生じる。このまま彼女達を帰していいものか。

 

(だけど、それはできない。)

 

自分達の勝手な都合で巻き込むようではデス・ブレイズと同じだ。

それだけは、できない。

 

「これ以上彼女達を巻き込むことはできない。

 あの二人はこっち側の人間じゃない、優しすぎるんだよ・・・・彼女達は。

 戦いはこれから激化していく。非情な決断を下さなければならないときが、またきっと来る。」

 

ガッシュは静かに頷いた。表情も元のハンターのそれに戻っている。

決意の眼差し、それはまたトウヤも同じだった。

たとえ、それがどんなにつらい決断であろうとも下す覚悟がこの身にはある。

彼女達にまでその道に付き合わせるわけにはいかない、あの二人をこちら側に引きずりこんではいけない。

故に修羅と蔑まれようとも、二人だけで戦い抜く決意が必要で迷いを捨てなければならない。

 

「そう、俺達は一振りの剣になる。」

 

かつて心に誓った言葉を口にする。

それだけでわずかにあった迷いは完全に消えうせた。

 


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