前置き
この小説を読む前に、次のことを理解しておいて下さい。まず、筆者は金色のガッシュという漫画を、ほとんど知ら
ないと言うこと。単行本の1〜3巻までと、最近のサンデーを一月分ぐらいの知識でこれを書いたので、間違いがあ
っても「ふっ。青いな」とか思っておいて下さい。ガッシュにハートを打ち抜かれたyosの影響で、じゃぁ書いてみるか
とか思った程度なので。キャラもオリジナルだし・・・しかも強すぎる・・・10ページ程度の落書きのような小説です
が、最後まで読んでいただけると恐悦至極の極みです。ではでは、本編をどうぞ。
ガッシュ?
『俺がそいつと出会ったのは、昼間でも薄暗く感じるような雨の日だった』
傘立てにおいておいた傘が講義中に何者かに盗まれたために、俺は5メートル先ぐらいしか見えないような
水のカーテンの中を突っ走る羽目になった。
『雨宿りのために駆け込んだ橋の下、他に誰もいないだろう場所で 』
全身濡れ鼠になって悪態をつく俺を、そいつは俺の一番嫌いな、全てを諦めた瞳で見ていた。
『何かを待つように、何かに怯えるように、何かにすがるように』
そいつを見て、あいつを思い出す。一番思い出したくないこと、一番忘れてしまいたいこと、一番忘れられないこ
と。あいつのことを、そいつは思い出させる。
『そして、そんなものは存在しないことを悟りきったように』
だから俺は、声をかけずにいられなかった。そうしないといけないように、そんな気になった。今、そいつに声をか
けないと一生後悔することになる。あの時のように・・・
『そいつは、小さな口を小さく開いて言葉を紡いだ』
俺以外の誰にもその存在を認めてもらえず、俺以外の誰にもその輝きのない瞳を向けず、俺以外の誰にも
その心を開くことのなかったあいつ。そして、あいつが最初に紡いだ言葉。
『私に近づくと、不幸になるわ』
同じ言葉。・ 同じ瞳。同じ存在。だから俺も、あいつに言った言葉と同じ言葉を言う。
『俺はもう、十分に不幸だよ』
俺はそいつに、手を差し出していた。そいつは自然に、俺の手を掴んだ。引き起こしてみて、そいつの軽さに驚く。
あいつは、それでももう少しは重たかっただろうな、と。
「俺は、宇和秀臣(うわひでおみ)。お前は?」
「フィス。」
小さくそう言って、そして一冊の本を俺に手渡す。萌葱色の本。
「これは・・・」
ぱらぱらとめくってみて、さっぱり読めないことに当惑する。一体、俺にどうしろと・・・
「ただ朽ちていくだけでも、よかったんだけど。」
本が、一瞬光ったような気がした。フィスはそれを見て、小さく微笑を浮かべる。
「あなたが、私の持ち主ね。」
泥で汚れている服の裾をつまんで、俺に向かって優雅に一礼するフィス。何のことだかさっぱりわからない俺。
「よろしく、秀臣。お互いが、少しでも幸せになれますように。」
読めなかったはずの文字が、少しだけ読めるような気がした。
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「ライセム!」
フィスの持ち主になってわかったこと。フィスは魔物の子供で、魔王を決める戦いが行われているらしい。本を焼
かれたものは失格で、最後まで本を守り抜いたものが魔王となる。望む望まざるに関わらず、他の本の持ち主と
戦わねばならない。そのために、俺が術を唱える。フィスを戦わせるための術を。
「第三の術、レ・ヴァルシュス!」
今回の相手は、光を放って来るみたいだ。光の矢を、炎の壁が防ぎ止める。
「なっ・・・完全に、防がれただと!」
今まで色々なタイプがいた。風を操るやつ、水を操るやつ。近距離が鬼のように強いやつ、遠距離で真価を発揮
するやつ。フィスは、中から近距離。炎で全てを焼き尽くす!
「第一の術、ヴァルフェン!」
微妙な空間をあけておかれたフィスの両手の間から、爆炎が迸った。
「ぅわぁっ!ラ・セラフィム!」
光の壁が炎を遮るが、別段気にすることはない。どうせ、防がれるとわかって放った炎だ。相手が炎を防ぎ止め
ている間に俺は側面に回り込む。俺の左手には本。右手には・・・
「ヴァルフェン!」
牽制用にもう一発炎。慌てて防御術を発動しようとする相手の顔が、よく見える。今まで戦っていて思ったこと。
持ち主は、ほとんど戦うことがない。もっぱら魔物に戦わせるだけだ。もちろん、魔王を決める戦いなのだからそれ
がいいのだろうが、・ 俺は別にフィスを魔王にしたいわけじゃない。フィスも、魔王になる気はないようだ。俺が戦
うのは、フィスを失わないために。フィスが戦うのは、魔界に戻らないために。だからこそ、俺は・・・
「隙だらけだな!」
右手に持った木刀で相手の本を跳ね飛ばす。
「なっ!」
さらに、本を取り落とすまいと体勢を崩す相手の喉に木刀を叩き込み、
「ヴァルフェン!」
後ろに飛び退きながら術を放つ。呆然とする相手の魔物の目の前で、魔物の本は燃え尽きた。
「相手が悪いと思って諦めな。いくぞ、フィス。」
血反吐を撒き散らしながらのたうち回る相手にそう言って、俺は消えゆく魔物をただじっと見るフィスに手を差し出
す。魔物が消える様を目の当たりにしても、フィスの表情に感情は表れない。俺の手をいつも通り握り返して、フィ
スはゆっくりと歩き出した。
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「・・・怖い人ね。」
魔物同士が戦っている最中に、本の持ち主に直接攻撃を仕掛けた男。何の躊躇いもなく、何の手加減もなく、も
っとも効率のいい方法で勝利を収める。ぞっとする強さ。
「だからといって、逃げるわけにもいくまい。お前の成すべきことを成すために、倒さねばならない者の一人だ。例
え相手が強くとも、恐ろしくとも、この戦い最後まで目をつぶらなかった者が勝利を得る。それに、あの男ならいとも
容易くガッシュの本をも焼き払うことが出来るだろう。だからこそ、勝たねばならない。」
ガッシュの本・・・そうだ。あの本を燃やすのは、私の仕事。
「貴方の言う通りね、ブラゴ。行きましょうか。」
私が成すべきこと。そのために、こえなければならない。
「いつ仕掛ける?シェリー。」
「そうね・・・取りあえずは、話をしてみましょう。それで丸く収まるのなら、それにこ したことはないわ。」
そうは言ってみても、自分でそれは無理だと思う。不思議な意志を感じる。ある意味、ガッシュの持ち主に似たよ
うな雰囲気。でも、何だか重い。勝てるのだろうか?私は、あの男に私の力で、勝てるのだろうか?
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今俺が使えるのは、第三の術まで。今まで戦った奴等の中で、一番多くの術を使えたのは第七の術までだった。
それに比べると少し心許ないが、術の数が決定的な差ではないと言うことも知っている。戦い方のうまいやつ、確
固たる信念を持って戦っているやつが勝ち残る。これから先戦う奴等は、きっとそう言う意味で強いんだろうな。
「フィス・・・」
小さな寝息を立てる、少女の外見をもった魔物。俺がフィスを失わないためにも、俺がフィスを守ってみせる。
例え、どんな手段を用いようとも。
「絶対に、生き残らせてやるからな。」
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本の持ち主が入っていったのは、一世代前に建てられたようなぼろぼろのアパートだった。二階の、一番右端。
「・・・」
私は一度深呼吸する。今まで何回か強い相手と戦ったけど、こんなに緊張したのは初めてだ。
「あの男を、怖れているのか?シェリー。」
そんな私の心を見透かしたかのように、ブラゴがそう聞いてくる。
「・・・そう、かもしれないわ。でも、やらないといけない。それに、私とブラゴだったらできる。」
そうだ。やってみせる。
「・・・」
もう一度、私は深呼吸した。後は、真っ直ぐ前に進むだけだ。