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今夜の番組チェック

コンコン、とドアがノックされる音で、俺は微睡みから引き戻された。

フィスの寝顔を見ている内に、いつの間にか俺も寝てしまっていたらしい。

外していなかった腕時計を見ると、零時の手前を指している。こんな時間に、一体誰が?

「どちら様ですか、と・・・!?」

細く開けたドアの向こうに立っていたのは、見たことのない女性。そして、その女性が手に持っている黒い本。

「本の持ち主・・・」

だとすると、やることは・・ 

「待って。私は、まだ貴方と戦う気はありません。」

卓袱台の上に置いてある本に視線を向けた俺に、その女性は静かにそう言う。不思議な女性だ。確かに、戦う気

はないようだが・・・

「貴方は、本の力を何に使っているのですか?」

少し警戒心の薄れた俺に、出し抜けに彼女は聞いてきた。何に、か・・・

「・・・俺と、フィスのためにかな?俺達の今を壊されないために。」

そんなことを聞いて、どうするというのだ?

まぁ、何を考えているにせよ、フィスの本を焼くことを目的としているのなら・・・

「で、あんたはそんなことを聞いて回ってどうするつもりだ?」

彼女の後ろに、魔物がいる。圧倒的な威圧感を身にまとった、恐怖を呼び起こす魔物。

「貴方の本を、焼かせて下さい。」

やっぱり、それが目的か。

「望んで身を置くような世界ではありません。中途半端な気持ちは、よけいに自身を傷つけるだけになります。」

「じゃぁ・・・」

さらに続けようとする彼女の言葉を途中で遮る。

「じゃぁ、何であんたは戦っているんだ?あんたの気持ちは、中途半端なものじゃないって言うのか?」

「私には、戦う理由があります。成さねばならないことがあります。もう一度聞きます。 貴方の本を焼かせて下さ

い。そして、このことは忘れて下さい。」

 無茶苦茶言うやつだ・・・まるで、世界の全てを自分だけで背負い込もうとしているような・・・

「あんたの顔は、決意に満ちてるな。確かに、あんたは確固たる目的のために戦っているようだ。だけど、俺も中途

半端な気持ちではなくてね。あいつのためにも、俺のためにも、フィスの本を焼かせるわけにはいかない。」

立ちふさがるものは、ねじ伏せる!

「・・・だったら、力ずくで・・・」

彼女が一歩右に動くと同時に、魔物が右手を俺に向ける。だけど、俺だってただそれを呆っと眺めていたわけじゃ

ない。

「フィス!」

後ろに飛び退きつつ、右手をフィスの方に向ける。本が渡される感触と同時に左に移動。本を開いたのは、ほぼ同

時だったろう。

「レイス!」

「ヴァルフェン!」

お互いの術が、打ち消しあう。力はほぼ互角か?

「そう言や、名前聞いてなかったな。俺は宇和秀臣。魔物はフィス。あんたは、何て言うんだ?」

術のぶつかり合いで声がかき消されないように思いっ切り怒鳴りつつ、俺は壁際に立てかけてある木刀をひっ掴

む。

「私は、シェリー。魔物はブラゴ。昼間の戦い、見させてもらったわヒデオミさん。正直言うと、あんまり貴方とは戦い

たくないんだけど・・・」

俺の戦い方を、見られたのか・・・

「そうも言っていられないから!」

「不公平だな。あんたは俺の戦い方を知っているけど、俺はあんたの戦い方を知らない。女だからって容赦できなく

なったが、恨むなよシェリー!」

ここで戦うのはまずい。警察とか呼ばれるに決まっているからな。まずは、別の場所に動くとするか。

「レ・ヴァルシュス。」

炎の壁を目眩ましにしつつ、俺は窓から一気に飛び降りた。

下は軟らかい土の上に、落ち葉が堆積している自然のクッションになっている。掃除しないってのも、時には役に

立つものだ。

「来い、フィス。俺が受け止めてやるから。」

「わかった。」

躊躇せずに、フィスが俺めがけて飛び降りる。空中にぱっと広がるフィスの長い髪に見とれる間もなく、フィスの軽

すぎる体が俺の腕にすっぽりと収まった。

ーどこで戦うべきか?ー 

人が来ないところで、ある程度広い方がいい。

「レイス!」

考えていたところに、後ろからシェリーの声がした。とっさに俺は、フィスの手を引っ張って左に飛ぶ。

俺のいたところが、バスケットボール大ぐらいえぐれていた。

「結構、威力があったんだな。」

それにしても、後ろから狙い撃ちとは・・・

「意外に、えげつないな・・・ヴァルフェン!」

お返しに、炎。あんまり炎をぶっ放してて、火事になったら困るな。

「ついて来いよ。」

この時間、河川敷なら人もあまりいないだろう。水もあるから、火事にもなるまい。

「ヴァルフェン!」

もう一度だけ炎を放って、俺とフィスは少し離れた河川敷に向かって全力ダッシュをした。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「なるほど・・・周りに迷惑をかけたくないと言うことかしら?」

「まぁ、な。火事になったら困るからな。」

俺とフィスが河川敷に着いてから五分後、シェリーとブラゴが ゆっくりと坂を下りてきた。

「やっぱり、やりあうのか?できるなら、戦いは避けたいんだけどな。」

「・・・」

沈黙。そして、シェリーがゆっくりと本を開く。やるしかないということか。

「だったら、遠慮はしないぞ。」

俺もフィスの本を開き、シェリーの動きに備える。あんまり、無駄玉は撃てないしな。なんて言ってられないか・・・

「ヴァルフェン!」

先手を打つ。使える術は、三つまで。

「レイス!」

シェリーが術を相殺している間に、フィスがシェリーの左側に回り込む。それを確認しつつ、俺もフィスの反対方向

へ回り込むように動いた。いつも通りの連携で、何とか出来るだろう。フィスの炎に気を取られている術者の横側

から近づいて、木刀一閃で本をはねとばす。

ーもらっ・・・ー

 いつものように踏み込もうとした俺を、ブラゴという名前の魔物の鋭い眼光が貫いた。圧倒的な威圧感と恐怖が、

俺を襲う。踏み込むはずの足が、前に進まなくなった。

「秀臣!」

「レイス!」

フィスの声と同時に、シェリーの声。一瞬浮遊感に包まれた後、俺は猛烈な勢いで後ろに吹き飛ばされた。

「ぐ・・・がっ!」

地面に叩きつけられた衝撃で、一瞬息が止まる。

ーこのまま苦しんでいたところで・・・ー

 甘い相手じゃないんだ、今回のは・・・

「第二の術・・・」

息が切れ切れだが、大丈夫。本の文字は光っている・・・

「ヴァルフィア!」

相手の足下から、数本の炎の柱が立ち上る術。

「くっ・・・ブラゴ!」

致命傷ではないにしろ、いくらか手傷は負わせたみたいだな・・・

「大丈夫?秀臣。」

一瞬ブラックアウトした俺の意識に、フィスの心配そうな声が響く。おかげで、目が覚めた。

「何とか、な。お前は?」

地面に手をついて立ち上がる。ちょっと、フラフラするかな?

「私は問題ないよ。」

それだけ答えて、フィ スはすぐにシェリー達に視線を向けた。

「ブラゴ・・・」

「問題ない、シェリー。多少、身体の半分を焼かれた程度だ。まだ十分に戦えるとも。」

ブラゴの傷は、思ったよりも浅かったようだ。多少衣服が焼け落ちているが、ただそれだけ。

「まぁ、今のは五分五分って考えておくか。」

そうじゃないと、損だ。

「さて、と。んじゃ、しきり直しと・・・」

「アイアングラビレイ!」

 俺に最後まで喋らすことなく、シェリーの手の黒い本が光を放った。ブラゴの手が、上から下に向かって動く。って

ことは・・・

「ちっ!」

 フィスに体当たりするようにして、俺は横に飛んだ。さっきまで俺の、いや正確にはフィスのいた場所が大きくえぐ

れる。そう言う術かよ・・・

「くっ・・・かわされた!?」

「ヴァルフェン!」

 炎を放って時間を稼ぐ。だけど・・・

ーこのままじゃ、負けそうだな。実力がかなり違う・・・いや、そんなこと関係ないか。 俺は、フィスを失わないように

 するだけだ!ー 

 さっき吹き飛ばされたときに、幸運にも手放してなかった木刀を握り直す。例え俺の身を多少犠牲にしようとも、

勝利をもぎ取ってみせる。

「第二の術・・・」

本を開いて、そして俺は気が付いた。読 める部分が、増えている。第、四の術・・・

「訂正・・・」

賭けてみるか?やっぱり、自分が痛いのはいやだしな。

「なっ・・・ブラゴ。一番大きいのをいくわ。」

「わかった。」

 一番大きいの、か。どっちにしろ、うつしかないな。不完全燃焼で負けたら、後悔する。絶対に!

「フィス!新しい術をいくぞ。」

「うん。」

 シェリーと瞳が合う。覚悟を決めた者同士の、一瞬の邂逅。

「第四の術、ヴァイロード!」

「ギガノレイス!」

 ブラゴの右手に、ブラゴよりも大きな黒い球体が生まれる。フィスの手元には・・・

「何だ?」

 フィスの身体が、それ自身が真紅の光を放っていた。俺の手の中の本が、それに呼応するように一際強く輝く。

そして・・・

「第、五の術・・・」

 続けて読めと言わんばかりに、本がめくれる。光を放つ、文字の羅列。

「第五の術、ヴァイ・ラ・ウェイ・・・」

 迫り来る漆黒の球体に向かって、真紅の一閃が疾った。一瞬、全てが止まったように感じた。風も、音も、光

も・・・

 きゅん!

 耳鳴りのような音が聞こえた。眩しいまでの白い光が、視界を覆い尽くしていた。吹きすさぶ風を、背中に感じた。

「・・・」

 何が何だかわからないまま、俺は空を見上げていた。いつの間に、自分が仰向けになったのかすらわからない。

しかも、さっきまで立っていたところからはるかに離れた土手にいた。何とか上体だけを起こして、そして俺は愕然

とする。破壊の爪痕。すり鉢状に地面が削られている。かなり大きな円形だ。そして、その淵にうつ伏せに倒れて

いるフィスと、反対側に吹き飛ばされているシェリー。ブラゴは、シェリーから少し離れたところにいた。あまりにもす

ごすぎて、逆によくわからない。これが、フィスの力なのか?

「くぅ・・・」

 身体を引き起こして、その苦痛に身をよじる。本は・・・しっかりと左手に。

「手放してないってのが、ある意味怖いな・・・」

 木刀は・・・

「あんな所に転がってるのか。」

 フィスに近い草むらの中に、見慣れた茶色の柄が見えた。

「ぃててて・・・」

 ぎしぎしと軋む身体を引きずりながら、俺は少しずつフィスの方に向かって歩く。フィスは気を失っているのか、ぴ

くりとも動かない。死んでいるのではないか?そんな思いが、一瞬脳裏を横切った。

ーいや、そんなはずはない・・・ー

 確か、 魔物は死んだら消えるんだったよな。まだ消えてないってことは、生きてるってことだ。

「大丈夫か?フィス・・・」

 木刀を拾い上げながらフィスに声をかけるが、返事どころかぴくりとすら動かない。

「ぅ、く・・・」

「!?」

 目を覚ましたのは、俺だけではないようだ。えぐれた地面を挟んで反対側。シェリーがゆっくりと起きあがる。

「ブラゴ・・・大丈夫?」

「脆弱な人間と一緒にするな。自分の心配だけをすればいい。」 

 まずい・・・向こうは、二人ともしっかりしてるみたいだ。それに比べて俺は・・・

「なっ・・・これは・・・」

 シェリーが、驚愕の声を上げた。まぁ、その気持ちはよくわかるが・・・

「こんな、力を・・・」

「信じられん。」

 ブラゴが、率直な感想を述べる。そして、その鋭い眼光を俺に向けた。

「信じられんが、事実は事実だ。シェリー!驚くのは後回しだ。」

「・・・ええ、そうね。ヒデオミさん!どれだけ、危険な世界に身を置いているのかわかったでしょう?貴方が望む望ま

ざるに関わらず、貴方は周りの人達を巻き込んでしま うの。だから、これ以上貴方と貴方の周りの人が傷付かな

い内に・・・」

「黙れ!」

 勝手な物言いのシェリーに向かって、怒鳴りつけ る。俺と、俺の周りの人間だけしか考えてないのか?

「俺が幸せな日常を送るために、フィスを生け贄に差し出せと言うのか!?確かに、俺が フィスと出会ったのは偶

然だ。だけどな!偶然でも、出会っちまったんだよ。出会っち まったからには、俺は責任をとらないといけないん

だ。」

 そこまで一気にまくしたてて、一息つく。また、あいつのことを思いだしちまったな。俺の過去。後悔しかない、思い

出・・・

「何が・・・何が貴方を戦いに駆り立てるの?どうして、望んでこちら側の世界に身を置こうとするの?どうして、魔物

なんかを庇うの!?どうして、貴方は・・・貴方達は、 貴方達の身体が傷付くのをいとわずに魔物を助けようとする

の!?私にはわからない。 お願いだから、本を渡して。それで、誰も傷付かずに済むのに・・・」

「誰も、傷付かない?馬鹿なことを・・・俺と、フィスが傷付く。俺はもう、あんな想い はこりごりだ!目の前で守りた

いと思った者を失うなんて、もう二度としたくない!だ から、俺は戦う。例え、この身が引き裂かれようと・  ・・俺

の手がこの本を掴んでいる限り、俺は戦う!」 

 フィスを庇うように立ち、本を内側のポケットにねじり込んで木刀を握りしめる。フィスなしで、どこまで魔物と戦え

るのかなんてさっぱりわからないが、それどころか勝てる見込みなど万に一つもありはしないだろうが、それで

も・・・

「そう・・・」

 悲しげに呟くシェリー。そして、ブラゴが俺に右手を向けた。

「レイス。」

 シェリーの声。それと同時に、俺は右前方に走った。レイスという術は一直線に力の塊を投げつけるモノ。

だとすれば、その射軸から離れれば喰らうことはない!

「なっ・・・く、レイス!」

 ブラゴが俺に右手を向け直し、そしてシェリーが叫ぶ。その瞬間に、俺は左に跳んだ。左は、さっきフィスとブラゴ

の力のぶつかり合いで出来たクレーターみたいなくぼみ。そのくぼみを駆け下り、右に左にステップを踏みながら、

俺は一気にシェリーとブラゴとの差を詰める。

「アイアングラビレイ!」

上から叩きつけるタイプの術だったか・・・

ー右か左か正面か・・・ー 

 一瞬、考える。シェリーの性格からして、一体どこに落とすのか・・・だが、そんなことはどうでもいいと思った。シェ

リーの性格よりも自分の考えだ。落ちてくる前に、駆け抜ければいい。

「でぇぇぇっ!」

 一瞬の差で、アイアングラビレイの衝撃を背中に感じる。迷っていたら、叩きつぶされていたか・・・だが!

ー抜けた!ー

 シェリーは目の前。驚愕に見開いた目、震える瞳、その全てが見える距離。

「もらった!」

振り上げて、振り下ろす。今まで通り、本を狙って。

 がっ!

「!?」

木刀に、手応えはあった。だがその一撃は、本を弾き飛ばすことは出来なかった。

「ブラゴ!」

「・・・なんだと・・・」

 ブラゴが本を庇う位置に立っていた。木刀の一撃は、ブラゴの額を割っただけ。もちろん、ダメージはあるだろう

が・・・

「ふん・・・」

 俺を見るブラゴの視線に、弱った感じはない。全てを射抜く、そんな視線。

「わかっていれば、防ぎようもある。お前の戦い方は、見たと言ったろう?」

「くっ・・・」

 威圧感に押されて止まっていた足を、俺は何とか横に動かそうとした。

「レイス!」

 だが、ほんの少し遅かった。右の脇腹に衝撃。二、三回回転して、そして地面に叩きつけられる。

「ぐ・・・」

 叩きつけられた衝撃で息が一瞬止まったが、レイスが直撃したところは運良くフィスの本だった。左側のポケット

に入れていたら、多分今のでおしまいだったろう。だけど、まだ体は動く。

「レイス!」

 もう一発は、後転して何とかかわせた。

ー取りあえず、体勢を立て直さないと・・・ー

 起きあがりながら木刀を握りなおし、視界にシェリーをとらえる。ブラゴは?

ーどこに・・・ー

「!?」

 いないと思った瞬間、左側にプレッシャーを感じた。その方向を見る前に、木刀が動く。

「レイス!」

 がきぃぃ!

「ぅぐぁぁっ!」

 真横からの衝撃に、思いっ切り吹き飛ばされた。くぼみの底に向かって、転がり落ちる。それでも、レイスを直接

喰らったわけじゃない。半分の重さになった木刀が、俺の身体を守ってくれた。だけど・・・

ー盾も、矛も失った・・・身一つで、勝てるのか?ー

 答えは、否。気を失ったままのフィスなら、かついで逃げることも出来そうにない。だったら、どうなるんだ?フィスの本を、フィスを失うのか?

ーそんなのは、絶対に嫌だ・・・ー

 嫌だけど・・・

「もう、諦めて・・・もう、本を渡して。貴方には、戦う力は何一つ残ってないのだから。」

 シェリーの声が、朧気に聞こえる。確かにそうだ。力は、何一つ残っていない。だけど、だけど・・・

「お願い秀臣。もう、立たないで。もう、本を渡して。」

 すぐ側で、聞き覚えのある声がした。薄れかけた意識が、一瞬で覚醒する。

「フィス・・・気が付いたのか?」

「・・・」

 俺のすぐ傍らに膝をついていたフィスに問いかけると、フィスはしばらくうつむいた後小さく首を振った。

「?」

「・・・私は、ずっと起きてた。私が戦えないなら、秀臣はすぐに本を渡すだろうって、そう思ってた。だけど・・・」

 フィスの目から涙がこぼれる。俺は、それを呆然と眺めていた。

「だけど、秀臣は全然本を渡さなくて。傷付きながらも真っ直ぐに向かっていって・・・ どうして?どうして、本を渡さ

ないの?そうすれば楽になれるのに。私と一緒にいても、不幸になるだけなのに・・・」

「・・・馬鹿だな、フィス。」

 悲鳴を上げる身体の各部を気力で動かして、俺は立ち上がる。短くなった木刀を投げ捨て、懐から萌葱色の本を

取り出して、そして俺は本を開いた。

「今まで、どれくらい一緒にいたと思ってるんだよ。俺は、絶対にお前を手放したりしない。不幸になってもかまわな

い。それが、俺の贖罪だからだ!」

 ブラゴを見て、シェリーを見る。

「フィスが起きたからには、まだ戦える。俺は本を渡したりはしない!」

「どうして貴方は・・・どうして、貴方は立ち上がれるの?もう、立ち上がれないはずなのに・・・」

 シェリーに言われるまでもなく、自分でも不思議だ。ここまでやられて、何で俺は立てるんだろうな・・・

「それは、多分・・・多分、フィスがいるからだ。」

ぱっと頭に浮かんだ言葉。その言葉を確かめるために、俺はフィスの頭をぽんと叩く。こいつが勇気をくれるから、

こいつが立ち上がる力をくれるから、だから俺は戦える。

「フィスが、勇気をくれた。フィスが、力をくれた。俺の過去に立ち向かう勇気を。俺の過去を断ち払う力を。」

「秀臣・・・」

 俺を見上げるフィスの目。あいつと同じ瞳。

「だから俺は立ち上がれる。何度でも・・・何度でもだ!」

 フィスは絶対に、守り抜く!

「ヴァルフェン!」

 想いが炎となって迸る。

「ギガノレイス!」

 それを防ぎ止める、最大の力。

「フィス!もう二度と、さっきみたいなこと言うなよ。今度言ったら、マッチの炎で徐々に本をあぶってやるからな!」

「うっ!・・・うん・・・」

一瞬、フィスが心底嫌そうな顔をした。そりゃ、そうだろうけどな。

「お前は、俺が守るからな!」

「だったら私も・・・私もこれからは、秀臣を守ってあげるから。」

 だから・・・

『だから』

「戦うぞ!」

「戦う!」

 萌葱色の本が、一層強く輝く。

「ガッシュの本と同じなの?そんなはずは・・・」

「馬鹿な・・・何だ、あのエネルギーの密度は・・・」

 炎が燃え盛る。俺とフィスの心が重なった今、負けるはずなんかない!

「第四の術、ヴァイロード!」

「くっ!ブラゴ・・・」

 絶対に、負けるモノか!

「第五の術、ヴァイ・ラ・ウェイ!」

「シェリー・・・」

 紅い閃光。視界を染める真紅の光。心地よい衝撃が、身体を駆け抜けていった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 俺が気付いたとき、すでにシェリーとブラゴはいなかった。跡形もなく消え去ったわけではないだろうから、きっと

ヴァイ・ラ・ウェイの直前に逃げていったのだろう。そう、俺は思っている。そうじゃないと、フィスの本が無事なはず

がない。

 あれから俺は新しい木刀を買って、相変わらず降りかかってくる火の粉を払っていた。最近、フィスは笑うことが

多くなった。あいつでは見ることが出来なかった、心からの笑顔。それを見るたびに、俺は幸せだなと思う。そして、

あいつも・・・あいつも幸せになれたのかな、と、少しだけ・・・ほんの少しだけ、心が痛むんだ。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「ガッシュの本の、持ち主か?」

「あんたは?」

以前シェリーと戦ったとき、その口からよく出てきていた単語。ガッシュという魔物のこと。

「俺は宇和秀臣。まぁ、見ての通り本の持ち主だな。」

「・・・」

ガッシュの本の持ち主は、警戒するように俺を見る。まぁ、警戒されて当然だろうが。

それに・・・

「今回ばかりは、俺から仕掛けるんだしな・・・フィス!」

 萌葱色の本を開く。もちろん、奇襲なんてのはなしだ。戦ってみたい相手だからな、ガッシュとは。

「ガッシュ!」

「ウヌ・・・やらねばならぬのか?清麿。」

「ああ、そうだ。」

 清麿と呼ばれた持ち主の代わりに、俺が答える。清麿が本を開き、ガッシュが身構えるまで待ってから、俺は術

を唱えることにした。

「楽しみだったんだよ、お前と戦うことが。ほんとに、ね・・・ヴァルフェン!」

「ザケル!」

 力と力がぶつかる。

ー俺とフィスは、一体何処まで行けるのだろうか?ー

 シェリーが言っていただけあって、かなりの力があった。

ー行き着くとこまで・・・どこまでも。どこまでも、な。ー 

 俺達の力が尽きるまで、戦い続けるのみ。

「ヴァルフィア!」

 どこまでも・・・

ガッシュ?終

後書き

 こんなところで終わらしてよかったのかなぁ?何となく、中途半端な気もするが・・・しかし、ガッシュとの戦いを徹

底描写する気にもなれないし・・・まぁ、いいか。

それにしても、何だかすごい内容になってしまった。ここまでする気はなかったんだけど・・・

いやぁ〜、しかし主人公とフィスは強いなぁ。ヴァイロード、ヴァイ・ラ・ウェイなんて、某ピーのピーのキャラであるピ

ーのぱくりじゃん(一部、著作権法に抵触するため自主規制)。あ、ピーのキャラでもあるんだよな。ってか、『あい

つ』って誰だよ(笑)。さっぱり『あいつ』の人物描写がでてなかったなぁ。取りあえず、フィスに似てるだとか、今は死

んじゃってるみたいだとか、そのぐらいしかわからないなぁ。にゃはは。しかし、ここまで読んでくれる人っているの

かなぁ?うわっ!想像したら虚しくなってきた・・・誰か感想下さいな。ではでは、今回はこの辺で。