あるプリーストの日常 第四話 仲間
「おはようございます、先生・・・・・って、これは?(汗)」
部屋に入ってきたサラが部屋に山のようにおかれた「花束やら何やら」を見て硬直する。
「・・・いやぁ、ちょっとな。」
朝から我ながら疲れた顔してるんだろうなとか、思いつつ生返事を返す。
「おはよう、エルク・・・・・って、これはすごいわね。これ、全部祝いの品?」
続いて、何故か部屋に入ってきたエレンも部屋のあり様を見て、驚いた顔をする。
・・・・暇なのか、ひょっとして。
「・・・そうみたいだなぁ。」
昨日までさっぱりした部屋だったのに、花やらプレゼントの箱やら何やらで部屋の一部が埋め尽くされているのだ。
「でも、こんなにいっぱい・・どうしたんですか?」
「ああ・・・まぁ、なんていうか、エレン、説明頼む。」
「あのねぇ・・・まぁ、いいわ。サラ、今日何があるか知ってる?」
「・・・あっ!ひょっとして授賞式が今日だったんですか?」
「まぁ・・・・そういうことなんだ。」
十三使途の授賞式・・・というか、正式な任命を下されるのが今日なのだ。
まぁ、そのせいか、義理で贈られてきているのも含めて、大量にあること、あること・・・十三使途に選ばれるのがどれだけすごいことがよくわかる。
「おめでとうございます、先生もついにあの十三使途の仲間入りですね。」
「・・・・ああ、そうだな。」
正直、レナン家の圧力があってこそ、選ばれたわけで・・・・非常に複雑だ。まぁ、確かに幼い頃からの目標の一つであったわけだが。
「あのねぇ・・胸張りなさいよ、貴方の功績を考えれば至極当然のことじゃない。
それに祝い事には変わりないんだから、もっと喜びなさいよ・・貴方らしくないわよ。」
珍しくエレンが気を使ってくれたようだ。
「・・そうだな、ありがとう。気を遣わしちまったな。」
「な・・・私は別に・・そんなつもりじゃ・・」「?」
視線を逸らし、照れるエレナと話がいまいちわかってないサラ。なんとなく見ていてほほえましい。
「まぁ・・・・とりあえず、宛先を全部確認していたんだが・・・まだ少し残っていてな。」
それで、少しうんざりとしていたわけだが。
「相変わらず妙なところで律儀ね。で、どんな人から来てたの?」
「まぁ、とりあえずは派閥のお偉いさんとか名前を覚えてないような同僚とかが大量に・・・」
「・・・・そのへんは見事に義理ね。」
大人の事情とかいうやつも大変だな。
「あとは・・・対不死怪物特殊部隊三番隊のメンバー、一同から来てるな。・・・・・一同とは別に個人からもほとんどの面子がくれてるが。
ご丁寧に・・・『エルク隊長』にって・・・書いてくれやがって・・・あいつら。」
「・・・・・」「あれ・・あの部隊はお姉ちゃんが隊長じゃなかったの?」
嬉しいような痛いような気持ちにとらわれる。エレンのほうを見ると、どこか寂しげな表情をしていた。
「・・・・ああ、俺が馬鹿やって、左遷されたからな。それで、副隊長であるエレンがそれを引き継いだってわけだ。」
「・・・そうだったんですか、ごめんなさい。あの・・・変なこと聞いちゃって・・・」
「ま、悪いのは俺だしな・・、後は、えーと・・・うん、騎士団とか狩人の派閥と魔術師の派閥から来てるな。」
なんとなく重くなった空気を変えるべく、別の話題を提供する。
「・・・また、変わったところから来てるわね?」
「ああ、ちょいと、魔物退治とかで知り合ったのが何人かいてな・・・・。三人とも名前が知れた精鋭だよ。」
上級の怪物退治には各派閥等より人員が派遣され、協力して退治にあたる場合もある。
・・・・・なぜか俺がよく狩り出されるわけだが。
「・・・・・でも、何故か三人とも『女の人』ですね。しかも、全部手紙付き。」
ピシッ
サラの一言で空気が凍った。
「・・・ねぇ、エルク?」
「な、なんだ?」
その笑顔と声の低さが怖いです、エレンさん。
「・・・・・・・・・ほんと〜に、任務で知り合っただけなのかなぁ?」
「あ、ああ・・・ほら、前にオークロードが現れたときがあるじゃないか。あのときに俺、派遣されただろ、そのときだって。」
あれは任務の中でも5本指に入る危険度だった。危険度Sの最上級クラスの怪物を退治する任務だったからな。
何故か主力部隊のほとんどが女性だったわけだが・・(ちなみに男は自分とアサシンだけだった)
「ふ〜ん・・・」
ぐは、思いっきり信じてねぇ。
ていうか、何で俺が今ピンチなんだ?
「あのなぁ・・・別に手紙が来たって、大したことじゃないだろう?」
疲れていたせいもあって、口調が思わず喧嘩腰になる。
「貴方の毒牙にかかってる子がいるかと思うと可哀想じゃない!!」
「って、毒牙はないだろう、毒牙は!?」
「違うっていうの!?」
「当たり前だろ・・・いいか、だいたいだな・・・っと!?」
売り言葉に買い言葉、いつものように口論がはじまろうとしたとき、部屋が明るくなった。
ボウッ
「・・・光ってる?」「これは・・・ルアーフ?」
突如光がぐるぐると自分達を囲むように回りだした。隠れている敵を探すのに用いられる探索用のスキル、ルアーフだった。
「あ〜、もしもし、お二人さん。」
「・・ジェイド!いつから聞いてたの?」「・・・ジェイドか。」「??」
上級神官の服に身を包んだ一人の男が入り口で呆れ顔で呟いてた。
対不死怪物特殊部隊三番隊の現在副隊長を務める男であり、エレンと自分とは長い付き合いの一人である。
先ほどのルアーフを仕掛けたのもやつだろう。
「まぁ・・俺の気配を感じ取れないぐらいの大声出してるんだ、聞きたくなくても聞こえるってやつさ。」
そう言って、肩をすくめると、部屋に軽い足取りで入ってきた。
「・・・・・来てたならもっと早くに声かけなさいよ」
先ほどの喧騒が見られたのが気になるのか、不機嫌さを表情と声音に隠さずに呟き、ジェイドのほうを睨む。
「せっかく気を遣って気配消してたのに、それはないんじゃないですか、隊長。」
エレンの殺気にも似た気をまともにくらいながらも、ジェイドはびくともしない・・・日ごろの慣れってやつだろう。
「あ、な、たの場合は野次馬根性の方が大きいんでしょう。」
「・・・ヒュゥ、大当たり。」
「・・・・あんたねぇ・・」「で、ジェイド。お前自ら出向いてきたんだ、全く用がない訳じゃないんだろ?」
今度はジェイドとエレンの口論がはじまろうとしたところを、手で制す。
「イエス、話が早くて助かるぜ。ちょいと、エルクに話がありまして・・エルクを少し借りていっていいですか、隊長?」
「勝手にしなさい!!」
「・・・・何故、本人を無視してエレンに聞くんだ、ジェイド。」
たまーに思うんだけど俺の人権って無視されてるような気がするぞ、うん。
「まぁ、一応許可得とかないとな。ほら、また怒鳴られないうちに行こうぜ。」
「そうだな・・悪いな、サラ・・・とエレン、ちょっと待っててくれ」
「・・・・早く終わらせなさいよ。」「はい。」
・・・まだ問い詰める気満々ですか、エレンさん。
廊下
「で・・・・何の用なんだ?」
人の気配を感じないところまで歩いていって、問いかける。
「おいおい・・・・せっかく祝いにきた友人に対してそれはないんじゃないか?」
先ほどと同じように肩をすくめて、オーバーリアクションをとるジェイド。
「・・・・・お前が、そういう顔しているときは何か真面目な話があるときだろ、ジェイド?」
「ヒュゥ、さすがは親友、鋭いねぇ。ま・・・話は至って簡単さ、まぁ・・最後まで聞けよ。」
途中からジェイドの目つきが対不死怪物特殊部隊にいた頃の戦いのときに見せていたものになる。
普段はどこか飄々とした感じのジェイドだが、こういうときはまるで別人だ。
「・・・ああ。」
「・・・・部隊に戻って来る気はないのか?」
「・・・・・・その答えは前に言ったはずだ。」
心のどこか予想していた話であったが・・答えるまでには時間がかかった。
ジェイドがいまいかに真面目に話しているかがわかっていたからだ。
「ああ、聞いたさ。だけど、今は状況が違う、お前が今戻っても、誰も何も文句は言えない。
というか、言うやつは俺がぶん殴る。」
「・・おいおい、ここ半年の間にずいぶんと過激になったな。」
「お前の代わりに無茶しなきゃいけなくなったからな。それに変わったのは俺だけじゃない・・・エレンだって、変わっちまったよ。
お前が部隊を除隊になってから、まるで抜け殻だ。部下の前では気丈に振舞ってるが、一人のときのあいつはとてもじゃないが見てられねぇ。」
「・・・・」
とてもじゃないが、普段のエレンからは想像できない。だが、どこかで納得してしまう。
彼女のことはよく知っているからだ。エレンには、どこか脆い部分があるのは何となくわかっていた。
「正直、俺は副隊長に向いてないし、エレンだって、ああ見えて隊長という重圧に耐え切れないんだよ。
今はなんとかなっているが、これから先どうなるかわかったもんじゃない・・・。
もう一度言うぞ、戻って来いよ・・・エルク。」
「・・・・・・・すまん、今はまだ・・」
それだけを声に出し、俯く。言葉がうまくでなかった。
「ああ、別に今すぐ返事もらおうなんて思ってねぇよ。正直・・まだ吹っ切れてねぇんだろ?」
自分の胸の内を読んだかのようにジェイドがため息をつく。昔から鋭いところがあり、悩みなどをよく見抜かれていた。
いまもきっと、察しているのだろう。
「・・・そうみたいだな・・頭ではわかっているんだが。」
過去を捨てれない、なかったことにはできない。
過去をなかったことにはできなくて、そして乗り越えることでもできない。
「まぁ、そう深く考えちまうのが、お前らしいけどよ・・・・だけど、お前が帰ってくるのを俺もエレンも待ってる。
それだけは覚えておいてくれよ。」
「・・・・ああ、すまんな。」
「なーに、たんなるお節介だ、気にするなよ。さて・・・俺はもういくぜ、書類が溜まってるんでね。」
「ああ、またな。」
いつのまにかいつものジェイドに戻っていた。軽く手を上げて、ジェイドの挨拶に答える。
そして、エレンが不機嫌になって、待っているであろう部屋に戻っていった。