あるプリーストの物語 バレンタイン編その4

 

「うう……今日は何月何日だ」

 

叩かれた頭を押さえながらエルクが問いかける。

その声には僅かに期待が込められている。

 

「残念ながらイベント当日です、エルク様。」

「ああ……やっぱり。ちょっとでも一日過ぎてることを期待してたんだが。」

「はは……これからが本当の地獄だぜ。」

 

いよいよ覚悟を決めたのかエルクとジェイドは落ち着いている。

 

「そういえばお姉ちゃん遅いね?」

 

どうしたのかなとサラが扉の方を見る。

 

「出来れば今日だけは来ないで欲しいよ。」

「ああ……でも来るんだよ、あいつはそういう期待だけは裏切ったことがないんだ。」

 

「心配しなくても今年は特別力が入ってましたよ。」

 

「いらねぇ!そんな情報いらねぇよ!」

「むしろ心配だよ!俺らの命がな!」

 

先程の落ち着きっぷりが嘘のように動揺する二人。

 

「頑張ってたねお姉ちゃん。」

 

無邪気な笑みを浮かべるサラ。

知らないことは幸せかな。

 

待たせたわね!!

「「来ちゃったー!!」」

 

扉が勢いよく開かれる。エレンがバスケットを持って部屋に入ってくる。

そしてこの世の終わりと言わんばかりに絶望する二人。男性陣と対照的に笑みを浮かべて歓迎する女性陣。

 

「あの……エレンさん、出来の方はその……」

 

何故かさんづけで恐る恐るジェイドが尋ねる。

 

「今回は自信作よ。

 今まで一番の出来ね!」

「良かったね、お姉ちゃん。」「流石です、エレン様。」

 

胸を張ってエレンが答える。女性陣が拍手を送るなか男達はすでに絶望ムードだ。

 

「ああ……自信作なんだ。」

「自信作ということは……やばいな。」

 

今までの経験上”自信作”=”致命的”の方程式が成り立っている。

さらに今回は一番の自信作と来た、結果は容易に想像できた。

二人から血の気が引いていく。

 

「じゃあ、早速……」

「待った!」「心の準備を!」

 

バスケットからチョコを取り出そうとするエレンの全力でストップをかける二人。

いよいよそのときがやってくる。

 


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