翌日。
日差しの強い日。心地良い風が教室内に吹く。
この日は学校の夏期補習日であった。
亮は少々上の空だった。昨日の出来事。
-真由が目の前に現れ、俺を殺そうとした…そして、ネックレスが光って…-
ぼんやりと窓を眺めていた。
「……草薙っ!!」
講師の怒声が聞こえた。突然の怒声に驚き、そちらへ向き直る。
慌てて亮は黒板の文字を板書し始める。クラスメイトの目線が亮に向く。
補習は午前中のみだった。特に部活も何もやっていない亮は、帰り支度を始める。
「いやー、それにしても一体何考えとったんや?授業中」
「お前が授業中にぼんやりってのも珍しいな」
二人の男子生徒が亮の近くに寄る。昔からの付き合いの紫藤 勤と今野 翔である。
勤「にしても一体ぼんやりするほど何を考えとったんか気になるで」
ちょっと茶髪混じりの眼鏡の少年、勤が笑いながら亮に問いかける。亮はちょっと
苦笑して答えた。
亮「…何でも無いさ。ちょっと昨日、おかしな幻影を見たんでな」
死んだハズの妹が蘇って、殺されかけたと言っても信じて貰えないだろう。そう思い
彼は軽く笑って嘘を言う。
翔「ところで、その傷はどうしたんだ?」
亮よりちょっと背の高めな、髪の少々長い少年、翔が彼の傷の事を気に掛ける。
亮「ちょっと…階段で転んだ時に切ったんだよ。」
勤「おいおい、お前らしくもねぇなぁ…ドジやなぁ」
勤がケタケタ笑う。亮もちょっと苦笑する。そこへ翔が話題を出す。
翔「そう言えば…例の通り魔だが、犯人が事故死した、って聞いたか?」
亮と勤が笑うのを止め、その話を聞く。最近この周辺で起こっている事件であり、
これの被害は重軽傷6名、死者3名。厳重警戒態勢を取られている程であった。
勤「聞いたで、朝のニュースでな…まぁ、因果応報、ってやつやな。」
亮「そっか…知らなかった…」
勤が亮の方を向き、軽く彼の頭を小突く。
勤「知っとけや!ワイ等の街の事やぞ!」
亮「ゴメンゴメン^^;」
そこへ一人の少女がやって来る。髪はやや青みがかった黒いショートヘア、小柄で
眼鏡を掛けた少女-蒼樹 和葉-だ。
和葉「例の通り魔についての話かしら?」
和葉が亮達に問う。
亮「うん、そうだけど…」
勤「おお、委員長もその事知っとるみたいやな」
和葉は成績優秀でありクラスの委員長と言う立場にも居る。さらに図書委員会にも
所属しているせいか、その真面目な雰囲気から「委員長」との愛称で呼ばれる。
和葉「知ってるけど…とりあえず、もう帰らない?また不審者が出る可能性もある
し…」
最も、本人はそこまでお堅いワケでもないが。なので無論亮達みたいに気軽に声を掛
ける
人も殆どいる。
勤と翔は話を切り上げ、その場を離れる。
勤「せやな。じゃワイ等は先に帰るで。」
翔「あぁ、それじゃあ」
亮は帰っていく二人を見送る。
亮「じゃあ、また明日」
亮と和葉は帰り道の歩道橋を歩きながら話す。
和葉「にしても…亮、今日ぼんやりしてたのって…やっぱり、妹の事?」
亮は頷いて、少々立ち止まる。和葉は振り向く。
和葉「…でも、何であんなにぼんやりしていたの?」
亮は言葉に詰まる。…でも、和葉は信じてくれるだろうか?
亮「…ちょっと、塾の帰り道に…真由が居てね」
和葉は目を丸くする。亮はそれを見て、やっぱり信じて貰えないか、と目を逸らす。
和葉「ふ〜ん……でも、実際に目の前に居たのよね?」
亮「…まぁ、信じてくれなくてもいいよ。」
和葉はちょっと下を向いてから、再び亮の方を向き直る。
和葉「…やっぱり、妹の事を相当大事に思ってるから?だから、そんな幻影を…」
亮「夢じゃないよ。そして、俺は殺されかけた。」
和葉が驚いた表情になる。そして傷の付いた頬を見る。
和葉「…そうなんだ…」
傷を眺めていると、突然和葉の携帯が鳴った。着信先を確認すると、和葉は急いで
歩道橋を下りていった。
和葉「あ、ゴメン。ちょっと用事が出来たから、先に帰るね」
亮「分かった。じゃあまた明日。」
歩道橋を下りていった和葉は携帯を取る。そして謎の人物と話し始める。
和葉「もしもし…えぇ、どうやら的中みたいよ。草薙 真由…
…え?例の通り魔も?分かった、すぐポイントFへ向かうわ。」
帰路を行く亮。とある廃工場の近くを通った時だった。
突如、誰かが襲いかかってくる。何とか亮は何者かのナイフを避けた。
亮はその何者かを見た。…それは今朝ニュースで事故死したと報道された、例の通り
魔だった。